「すごいですね」が部下を冷めさせる理由
Andyコーチです。
マネジャーになったばかりの頃、こんなアドバイスをされませんでしたか?
「部下のモチベーションを上げるために、とにかく褒めましょう」
「小さな変化に気づいて、声をかけましょう」
いわゆるマネジメントの「正論」です。 私も最初はそれを信じて実践しました。
でも、現場のリアルは違いました。
無理やり探し出した長所を「◯◯さん、ここがすごいね!」と褒めたとき、返ってきたのは…
「あ、はい…(この人、本心で言ってるのかな?)」という、冷ややかな苦笑いでした。
▼ 正論が「現場」で通用しないワケ
なぜ、教科書通りに「褒める」ことが、かえって信頼を損なうのでしょうか。
それは、私たちが無意識のうちに「上から目線の評価」をしていることが、相手に透けて見えているからです。
元エンジニアの私には痛いほどわかりますが、現場の人間は「嘘」や「計算」に敏感です。「モチベーションを上げるために褒めているな」という下心は、ノイズとして検知されます。
▼ アドラーが教える「褒める」の代わり
私が私淑するアドラー心理学では、「褒めてはいけない」と教えます。
「褒める」とは、能力のある人がない人に下す「評価」であり、対等な関係ではないからです。ではどうするか。 「勇気づけ(Encouragement)」を行います。
これは、「すごいね(評価)」ではなく、「ありがとう、助かったよ(感謝・貢献への注目)」と伝えることです。
メーカーの現場で、例えばボルトを一本締める地味な作業であっても、それがなければ製品は完成しません。 その事実に対して、対等な人間として「ありがとう」を伝える。
これだけで、オフィスの空気は劇的に変わります。
▼ それでも「成果が出ていない部下」には?
「感謝しろと言われても、成果が出ていない部下には言うことがない」
そう感じる方もいるかもしれません。 かつての私もそうでした。
しかし、ドラッカーはこう言います。
「人のマネジメントとは、人の強みを発揮させることである」
成果が出ていない時ほど、私たちはその人の「弱み」にばかり目が向きます。
ですが、勇気づけのリーダーは、そんな時こそ「強み」を探します。
「この仕事は失敗したけれど、粘り強く取り組んだプロセス(強み)はチームの刺激になったよ。ありがとう」
結果(Do)ではなく、存在やプロセス(Be)に感謝を伝える。
これが、どん底の部下を救う唯一のアプローチだと、私は現場で学びました。
【今週のTips】
「褒める」をやめて、「ありがとう」と言う。
部下との距離感に悩んだら、目を見て言わなくても構いません。すれ違いざまに「◯◯さんがいてくれて助かるよ」とボソッと伝えてみてください。賢いリーダーは、言葉の「意味」ではなく、言葉に乗せる「体温」を大切にします。
【今週の問い】
あなたは今日、部下を「評価(ジャッジ)」しましたか? それとも、仲間として「勇気づけ」ましたか?
次回のテーマ予告
次週は、「リーダーの孤独」について。
誰にも相談できないその悩みを、少しだけ軽くする思考法をお届けします。
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